
「美しく生きたい」を応援する、美藻です。
今回は、過去の微細藻類関連の取り組みをピックアップして紹介します!
自動車部品メーカーとして世界的に知られるデンソーが、2017年に、化粧品ブランドを手がけていることをご存じでしょうか。その名も「moina(モイーナ)」。
燃料開発の研究で見つかった藻のオイルがきっかけとなり、女性社員たちの手によって、まったく新しい化粧品として誕生したこの商品は、技術と感性の融合から生まれたまさに異色のプロダクトです。
このストーリーは、ただの「新製品開発」という言葉では片づけられない、ひとつの社会的な変化への挑戦でもありました。
CO2削減、環境保護、女性の活躍推進といったキーワードを体現するような展開を見せる「moina」の背景には、技術者たちの情熱と、女性社員たちの細やかな視点、そして社会に対する優しさが込められています。
今回は、その始まりから商品化に至るまでの経緯を、関係者の声とともに振り返っていきます。
本記事は「デンソー、微細藻類ボツリオコッカス活用の化粧品「moina」誕生の裏にあった挑戦」を紹介します。
デンソー、CO2削減から始まった微細藻類の研究と化粧品化の原点
バイオ燃料開発の副産物が、肌を潤すオイルになるという発見
「moina」の原点は、2006年の京都議定書施行に伴うCO2削減の企業ミッションでした。
このときデンソーでは、温室効果ガス削減の一環として、微細藻類を活用したバイオ燃料の研究をスタートさせました。
特に注目されたのが、デンソーが特許を持つ「シュードコリシスチス」や、筑波大学の渡邉教授が発見した「ボツリオコッカス」といった微細藻類。
東京大学や筑波大学と連携しながら、天草の研究施設で藻の培養を進めていくなかで、藻がCO2を大量に吸収し、オイルを高効率で生成するという点が高く評価されていました。
エンジン試験中に偶然見つけた、微細藻類オイルの保湿力と浸透力
重油に近い性質を持つと考えられていた微細藻類のオイルが、エンジン試験時に研究員の手に付着したことをきっかけに、予想外の“美容的発見”がありました。
「手についたらべたつくどころか、肌にすーっと馴染んでいった」と語る渥美氏の経験は、その後の研究方向を一変させる重要な気づきになったのです。
スクワランやオリーブオイルと比較した外部評価では、保湿力が高いことが数値で証明され、化粧品としての可能性が一気に広がりました。
この偶然の出会いから、研究者たちのなかに「燃料だけでなく肌にも使えるのでは」という新たな視点が生まれ、社内展示会を通じて徐々に社内にも認知が広がっていきました。
moina誕生と女性社員たちの挑戦
プロジェクトを立ち上げた女性たちの感性と行動力
2012年、それまで研究用にとどまっていた藻のオイルを「化粧品」という形に変えたのは、女性社員たちの行動力でした。
池部久美代氏がリーダーを務め、同部署の女性社員5名に声をかけたところ全員が賛同し、12月に「ドリームプロジェクト」が発足。
バイオ燃料から化粧品という異分野への挑戦を、女性ならではの感性と柔軟な発想で推し進めていくことになります。
彼女たちは容器や商品名、手モデルの選定にいたるまで全工程を社内で完結させ、2014年に「moina」ハンドクリームを商品化、2017年にはUVクリームも販売されました。
キラキラのストーンが、藻の可能性を語るツールに変わる瞬間
「moina」の象徴ともいえる蓋のキラキラしたチャームやストーンは、藻のコロニーをイメージして設計されました。
女性社員たちは「かわいさ」や「持つことの喜び」を重視してデザインを構成したのですが、上層部からは「なぜストーンが動くのか」とロジカルな説明を求められる場面もあったといいます。
そのとき池部氏は、チャームを“お客様との対話を生むコミュニケーションツール”と説明し、藻の構造や成分の由来を語る導入として活用する意義を明確にしました。
こうした丁寧な橋渡しが、女性の感覚と企業ロジックとの間に信頼関係を築き、「感性の価値」を正しく伝えることにつながったのです。
“女性脳”と“男性脳”の融合が生んだ革新
数字で証明した保湿力、2000人の評価を得てようやく販売へ
技術系企業であるデンソーでは、「しっとりする」などの感覚的表現では企画を通すことが難しく、moinaの商品化においても多くの壁が立ちはだかりました。
そのため、社内外のモニター2000人を対象にした評価調査を実施し、データで保湿力を証明した上で、競合他社との目隠し比較テストでもトップ評価を獲得。
ようやく販売許可が下り、初回ロットの1万5000個は半年で完売するほどの反響を呼びました。
商品が“技術”としても、“感性”としても高く評価された瞬間は、まさにデンソーらしいイノベーションの結実といえるでしょう。
プロジェクトを経て育った“伝える力”と女性の新たな役割
現在、「moinaプロジェクト(Mプロ)」には新たに9名の女性社員が加わり、販売やイベント企画にも関わっています。
活動は当初ボランティアでしたが、今では月に1日は業務時間として正式に認められ、人事評価の対象にもなりました。
池部氏は「補助的な立場だった女性たちにも、企画を考える力や意思決定の場が与えられ、自主性が育まれるプロジェクトになった」と語ります。
その経験は本業にも波及し、「男性脳に訴える進め方」と「女性脳で仕掛ける伝え方」の両方を学べたことが、自信と成長の源になっているのです。
まとめ:「デンソー、微細藻類ボツリオコッカス活用の化粧品「moina」誕生の裏にあった挑戦」を知り、より良い美藻生活を!
本記事は「デンソー、微細藻類ボツリオコッカス活用の化粧品「moina」誕生の裏にあった挑戦」を紹介しました。
技術と感性が融合した「moina」は、新しい企業のあり方を体現している
「moina」の誕生は、ただの化粧品開発ではなく、技術と感性が手を取り合いながら社会課題の解決に取り組む、新しい企業活動のあり方を示しています。
CO2削減を原点とした藻の研究が、女性の発想力と連携することで“美しさと地球環境へのやさしさ”を同時にかなえるプロダクトへと昇華されたのです。
これからの時代、企業に求められるのはこうした多様性ある視点と、柔軟な発想力を活かせる文化づくりだと改めて感じさせられます。
moinaはその象徴として、多くの女性や次世代の働き方に希望を与える存在であり続けることでしょう。
美藻一言メモ!
「moina」の原料である微細藻類シュードコリシスチスやボツリオコッカスは、いずれもオイル産生能力に優れた種であり、環境と美容の両面から注目される貴重な微細藻類です。
とくにシュードコリシスチスはデンソーの独自技術によって特許取得された新種であり、持続可能な産業素材としての将来性は計り知れません。
微細藻類産業において、機能性成分の応用が食品・医療に加えて化粧品分野へも拡大していることは、微細藻類の社会的地位向上にもつながる重要な動きです。
「moina」は、単なる製品ではなく、藻の魅力と産業価値を広く一般に伝える“パイオニア的存在”として今後も注視すべき事例だといえます。
参照:LIGARE